<2007.4.15> 晴れ
樹海の中を

関連画像は ぎゃらりぃ07 april .15に

巨大迷路のように 複雑に入り組むこの山隗 いったい何処まで続いて行くのか? 今にも樹海に飲み
込まれそうな弱々しい踏み跡をトレース 前進は続く

森林インストラクターとの肩書きを持つ 猟友の案内に分け入ったこの源流域 林道奥のピーク脇に車を捨て
肩を乗り越し 細い沢を跨いでいくつかの低い尾根を越えてきた 暗い森の中を潜ると導くように差し込む明り
其処は花崗岩砂岩主体に形成される白く明るい谷だった。。  此処まで背負った麦酒を流に沈め さっそく
一時間の個体調査を決め上下へと分かれ釣り始める 究極の透明度 積雪が少なかった事で渇水気味との
指摘通り 元々深みの少ない渓は更に懐が狭く成ってるようで 先へ先へと脚を進めた サッ!黒い影が走る
”おっ!居るなぁ。。” 放流等まるで無縁の流域には 先人達? そう戦後間もない頃イモナと呼ぶ山人等の
食糧と大切にされた岩魚達 人の立入る事少なくなった現代 いったいどんな素顔で我等を迎えてくれるのか
暫らく下ると落差も僅かな滝が現れた その左肩から覗き込むように発泡の中に投餌  流心から押し出され
今正に 駆け上がりに掛からんとしたその時 フッ!と目印が止まった。 僅かばかり送り込み切れの良い合わせ
クネクネと水面を割り跳び出したのは 鮮やかに橙色の斑点をちりばめたイモナ(ヤマト岩魚) 弱らさぬよう手早く
水辺に運ぶ 撮影の後掌の温度を伝えぬよう仕掛けをつまみ流に戻す 暫らくじっと考えて居るように定位やがて
思い出したように ゆっくり流芯向けて帰って行く しかし透明度の高い渓水 その姿もまた丸見えのままだ?
幾つかの個体サンプル確保して画像に残す 居着く場所条件により個体差は大きいようで ヤマト特有の深い
色合いもあれば白っぽい姿もあった。。  気が付くと既に先程アプローチ途中跨いできた支流の出会いまで
下ってきてしまった まだ約束の時間には幾等か有るがもう良い戻ろう 早いピッチで下った渓を又上流目差す
谷通しを選ばず微かな踏み後をさぐり 渓を見失わないように慎重に歩を進めた 此処の地に詳しい案内者に
よると この入り組んだ地形 時々登山者等が迷い込んでは遭難騒ぎを起すらしい

ごくっ! ”ああっ良い日だ 谷中で遣る麦酒はなんでこんなに美味いんだ”

其処からはカメラも背嚢に収め 遡行に専念谷をどんどん詰めていく 既に踏み跡さえも失われ 残るのは
野獣の痕跡のみ 自らの位地確認を怠ると いつかとんでもない場所へと迷い込んでしまいそうだ おそらくは
魚止めと思われる 如何にもという段々の滝その全容の画像も残せなかった 休息取りながらの沢詰めは
続いて行く。。

気が付くと 周囲が赤っぽい落葉に埋れ まだ冬の表情を
醸し出し始め ピーク特有の背が低い笹が密集する斜面を
一気に抜けるとそこは 国(県)を分ける山脈稜線へと跳び
出す しかし当初計画よりも先 やや南寄りに出てしまった
らしい 稜線上に残る踏み後の縦走と成る 暫らく行くが
車を乗り捨てた位地向け伸びる 下降点が見当たらない?
どうやら何処かで分岐点を見落としたらしい  止む無く
先の谷路ルートへと進路を取った ふかふかズブズブと
落ち葉が積み重なる谷沿いのルートは 一歩々沈んでは
脚を取られやばい事この上ない もう長い事登山者さえも
立入っては居ないのだろう 荒れてる! 崩れたルートは
処々縛られたテープだけが目印だ。。  先程からめっきり
口数が少なくなった同行者の状態が気になり 最後尾で
見失う事無いように注意しながら下る と? ジェット機が
通り過ぎるかの重々しい響き   ”なんだぁ あの音?”
時計に目を遣ると 12時19分 直下型地震の地鳴りで
だった 激しい動きの我々震度5強の揺れも感じる事無く
下降は続く やがてチロチロと姿を現した沢水は 多くの
命を集め 水量豊かな源流域の岩魚釣場を形成して行く
サッ! イモナの影を見ては ”おっ!””あれあれぇ”と
叫びながらの下降が続く しかし人間界はまだ遠い

                              oozeki

稜線縦走ルートへと出る